登熟時の高温に耐性があるイネ品種・系統を選抜する目的で,穂温を上昇させる装置を開発した.OHPフィルムで作成した透明な筒を穂に被せることにより,昼間の穂温を,10日間の平均で約0.8℃上昇させることができ,またその中に,幅2cm,厚さ5mmの黒色ゴムスポンジを接着することにより,昼間の穂温を2℃以上上昇させることができた.この処理による温度上昇に比例して,整粒割合は減少し,白未熟粒割合は増加した.この処理により,夜温は約0.15℃低下するが,白未熟粒の発生割合には影響しなかった.この装置により,高温耐性の基準品種を評価したところ,高温耐性の順位に対応した結果が得られ,他の評価法と同様の耐性の選抜が可能と考えられる.本装置による高温処理は,簡便であり,光合成を阻害せず,1個体で評価可能であることから,分離系統の高温耐性評価等に利用でき,高温登熟耐性の遺伝解析に有用であると考えられる.