抄録
栃木県内有数の畑作地帯である壬生台地の農業用地下水の水質を調査した.地下水の硝酸態窒素は環境基準値10 mg L-1を満たしていたが高い値を示した.地下水の水質は安定同位体を用いた方法(δ15N値利用法)および過去の土地利用状況から,化学肥料の影響を大きく受けていると推測した.ユウガオを標準栽培および多肥栽培し,果実の収量と硝酸態窒素の地下への浸透を調査した.多肥栽培による果実の収量は標準栽培の1.1倍であり,増収分は肥料購入費の増加分とほぼ同じで経済的メリットはなかった.作土に施用した窒素のうちユウガオに吸収されなかった窒素は,硝酸態窒素として降水により地下に浸透した.施用した窒素のうち地下へ溶脱した割合は,標準栽培が19.6%,多肥栽培が39.6%であり,多肥栽培は地下水の硝酸態窒素濃度の上昇に影響を与える可能性があることを示した.