抄録
アフリカでイネ収量は,塩とともに栄養不足によって低下している.本研究では土壌の違いがアフリカで栽培されているアジアイネとアフリカイネの種間交雑種NERICAのNa蓄積に及ぼす影響を検討した.NERICAの20系統,親品種 (WAB56−104,CG14) およびアジアイネ8品種を供試し,土壌は水田土壌および土壌栄養の少ないマサ土とした.イネは各土壌を充填した容量0.5 Lの3.5号ポットに播種し,播種後18日目から100 mMのNaClを与えた.塩処理開始時の葉齢は土壌で差がなかった.しかし,塩処理の影響はマサ土区で早く観察され,収穫は水田土壌区とマサ土区でそれぞれ塩処理開始後2週間と1週間に行った.収穫時の茎葉部Na含有率は,マサ土区の方が有意に高かった.2つの土壌区で茎葉部Na含有率はCG14が最も高く,アジアイネの耐塩性品種Pokkaliの含有率はCG14の30−40%で最も低く,WAB56−104はそれらの中間であった.NERICA系統間の茎葉部Na含有率は,CG14と差がないものからWAB56−104よりも低いものまで変異があった.各品種の茎葉部Na含有率は水田土壌区とマサ土区で有意な正の相関があった.そしてマサ土区/水田土壌区の茎葉部Na含有率の比は,品種間で0.7−2.1まで有意な品種間変異があった.このように塩土壌におけるイネの茎葉部Na蓄積は肥沃な土壌より貧栄養な土壌で促進されると同時に,NERICA系統間ではNa蓄積程度および土壌の違いに対する反応に変異があることが分かった.