日本作物学会紀事
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ダイズ (Glycine max (L.) Merr.) 種子中のカルシウム含量, カリウム含量,ペクチン含量と裂皮との関係
三枝 貴代川瀬 眞市朗堀野 俊郎戸田 恭子中村 善行
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2011 年 80 巻 4 号 p. 433-440

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抄録

裂皮性の異なるダイズ品種を日本各地で栽培し,種皮および子葉中のカルシウム,カリウム,マグネシム,マンガン含量およびペクチン含量,ペクチンのエステル化率を測定した.易裂皮性品種であるサチユタカでは,子葉でのカルシウム含量が他の品種と比べて低かった.しかし,正常粒と裂皮粒との間には,いずれの品種においてもカルシウム量に有意差は認められなかった.また,種皮では,品種間および正常粒と裂皮粒との間に有意差は認められなかった.カリウム,マグネシウム,マンガン含量は,種皮と子葉の両方で,品種間差も,裂皮粒と正常粒との差のいずれも認められなかった.子葉でのカリウム・カルシウム含量比 (K/Ca比) も,品種間差および正常粒と裂皮粒との差も存在しなかった.しかし,同じ圃場で同じ年に同一条件で栽培された同一品種間のK/Ca比は,裂皮粒は正常粒に比べて低かった.これらのことから,ダイズの裂皮には,カルシウム含量単独でなくカルシウム含量とカリウム含量とのバランスが大きく関与していることが示唆された.一方,種皮中のペクチン量とペクチンのエステル化率は,品種間および種子の裂皮状態間で有意差は見られず,裂皮に関与している可能性は低いと考えられた.

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© 2011 日本作物学会
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