日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
無菌栽培でアミノ酸を窒素源としたときの作物の初期生育
二瓶 直登増田 さやか田野井 慶太朗頼 泰樹中西 友子
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2012 年 81 巻 2 号 p. 194-200

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抄録
有機態窒素の作物生育に与える影響を解明するために,単一窒素源としてタンパク質を構成する20種類のアミノ酸を用いて5種類の作物を無菌栽培し,各アミノ酸に対する作物毎の生育への影響を検討した.作物別の比較をすると,イネ,チンゲンサイでは,アミノ酸間の生育差が大きく,コムギ,キュウリはイネ,チンゲンサイよりアミノ酸間の生育差は小さかった.ダイズでは,アミノ酸間の生育差はほとんどみられなかった.アミノ酸別の比較をすると,アスパラギン,グルタミンでは,無窒素区より地上部乾物重,地上部窒素含量の増加がみられ,一方,システイン,メチオニン,ロイシン,バリンでは地上部乾物重や地上部窒素含量が無窒素区より低下した.そこで,アミノ酸濃度を変えた時の影響を調べるため,生育への影響が異なる5種類のアミノ酸を単一窒素源に選び,イネ幼植物に対する影響について検討した.その結果,グルタミンで生育したイネは窒素濃度増加に伴い地上部乾物重,地上部窒素含量は増大した.セリン,バリンで生育したイネは,低濃度から生育阻害がみられた.グルタミンは無機態窒素を代謝する際に最初に同化されるアミノ酸でもあるので,植物体内で濃度が高くても障害をおこさず,窒素源として効率的に利用されていると考えられた.セリン,バリンはグルタミンに比べてアミノ酸生成経路の末端で生成されるアミノ酸であるため,植物に吸収されても代謝されず植物体内で濃度が上がり,生育を阻害したものと考えられた.
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© 2012 日本作物学会
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