日本作物学会紀事
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栽培
作期が異なる圃場栽培条件におけるタンパク質変異米水稲品種の米粒のタンパク質組成とタンパク質含有率の変動要因
大平 陽一佐々木 良治竹田 博之
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2013 年 82 巻 1 号 p. 18-27

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抄録

低グルテリン米水稲品種LGCソフトと低グルテリン・26 kDaグロブリン欠失米水稲品種エルジーシー潤および一般食用水稲品種ニホンマサリを供試して,4カ年延べ8~9作期を設定し,米粒のタンパク質組成と総タンパク質含有率 (TP) の変動要因やその品種間差を検討することで,タンパク質変異米水稲品種の米粒の易消化性タンパク質含有率 (DP) を低レベルに制御するための栽培管理上の要点を明らかにしようとした.重回帰分析の結果,DPは,TPと総タンパク質に占める易消化性タンパク質の割合 (DP/TP) の両者に影響されるが,DP/TPがDPに及ぼす影響の程度は,LGCソフトやエルジーシー潤の方がニホンマサリよりも大きいことが明らかになった.いずれの品種も,DP/TPは出穂後0~15 日間の気温と正の相関関係を示したが,LGCソフトとエルジーシー潤では,DP/TPは特に出穂後0~10日間の気温と高い正の相関関係を示し,登熟過程でDP/TPに気温が影響する時期はニホンマサリよりも若干早いことが示唆された.したがって, タンパク質変異米水稲品種のDPを抑制するためには,登熟初期が高温にならないような作期設定が重要と考えられた.DPにはTPも影響し,TPは出穂期の茎葉部窒素含有率・含有量と正の相関関係,登熟歩合と負の相関関係を示した.このことから,出穂期の窒素栄養状態と登熟歩合に留意する作付け計画や栽培管理が重要と考えられた.

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© 2013 日本作物学会
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