日本作物学会紀事
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栽培
山口県での早播栽培による秋季の生育初期における温度が秋播性程度の異なるコムギ3品種の二重隆起期と頂端小穂分化期に及ぼす影響
鎌田 英一郎高橋 肇金岡 夏美荒木 英樹丹野 研一
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2013 年 82 巻 2 号 p. 150-155

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抄録
本試験は,山口県においてコムギの早播栽培を確立するために,1998年から2010年の11作期にわたり,早播栽培による生育初期の温度が秋播性程度の異なる3品種の二重隆起期と頂端小穂分化期にどのように影響しているかを調査した.品種は,秋播性程度IIの農林61号,秋播性程度IVのイワイノダイチ,秋播性程度Vのあきたっこを供試した.早播栽培は,10月上旬に播種し(早播栽培区),11月から12月上旬までに播種したものを慣行播栽培区とした.生育日数は,播種期から二重隆起期まで,頂端小穂分化期までのいずれも,早播栽培区が慣行播栽培区よりも農林61号では短く,イワイノダイチではほぼ同じであり,あきたっこでは長かった.積算温度は,いずれも早播栽培区が慣行播栽培区よりも3品種とも大きかったが,その程度は農林61号で小さく,あきたっこで大きかった.農林61号のような春播性品種は,早播栽培すると生育初期の高温により生育が促進されて幼穂分化までの日数が短くなり,あきたっこのような秋播性程度の高い品種は,早播栽培しても春化を終了するまでにより多くの日数を必要とするため,幼穂分化が3月になっても終了しなかった.しかし,イワイノダイチのような秋播性程度が中程度の品種では,早播栽培における生育初期の高温に続く6℃付近の温度帯で春化を終了した結果,厳冬期を過ぎてから幼穂分化を終えることができ,なおかつ慣行播栽培よりも早く頂端小穂分化期を迎えることができると考えられた.
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© 2013 日本作物学会
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