日本作物学会紀事
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栽培
深水や窒素施肥条件による過度な分げつ抑制が水稲の高位分げつ出現に及ぼす影響
名越 時秀宇都 静恵松嶋 賢一平野 繁玉井 富士雄池田 良一
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2013 年 82 巻 2 号 p. 156-166

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抄録
深水処理および基肥窒素少量施肥による過度の分げつ抑制が高位分げつの出現に及ぼす影響とその施肥による変動を検討するため,極早生の北海道水稲品種きらら397を用いて試験を行った.試験区は,深水処理を行う深水区と深水処理を行わない標準区を設け,この両区それぞれに基肥と出穂36日前の追肥のm2当たり窒素量を異にし,穂肥窒素は全区に3 g/m2とした区を設けた.すなわち,基肥が2 gで出穂36日前の追肥が0 gの区(2・0・3区),基肥が2 gに加えて出穂36日前に追肥を2 gとした区(2・2・3区)および基肥が4 gで出穂36日前の追肥が0 gの区(4・0・3区)である.その結果,出穂期前後には,全ての試験区で高位分げつが出現し,深水区は標準区に比べ多く,また施肥区間では2・0・3区が最も出現数が多かった.通常の分げつ数との関係は,特に,主稈+1次分げつ数と高位分げつ数との間に有意な負の相関関係が認められた.また,2・2・3区では2次以上の分げつが増加し高位分げつの出現が抑制された.以上のことから,通常の分げつを過度に抑制するような栽培条件下では高位分げつの出現を助長することが明らかとなり,また分げつが抑制されても幼穂分化期直前の窒素追肥は高位分げつの出現を抑制することが示唆された.
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© 2013 日本作物学会
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