日本作物学会紀事
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品質・加工
遮光・高温条件下に生育した水稲玄米の粒厚と外観品質が米飯の食味と理化学的特性に及ぼす影響
石突 裕樹松江 勇次尾形 武文齊藤 邦行
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2013 年 82 巻 3 号 p. 252-261

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抄録

日本晴とヒノヒカリを供試し,2009年に岡山大学農学部附属山陽圏フィールド科学センターの水田で栽培した対照区,遮光区,高温区の玄米を粒厚別に選別して食味官能試験(基準米は各区粒厚1.8 mm以上の精玄米)を行った.総合評価は対照区で粒厚が小さくなるほど低下し,1.9 mm以下で顕著な低下がみられ,高温区では2.0 mm以下,遮光区では1.9 mm以下で急速に低下した.外観,味,粘りにおいてもほぼ同様の傾向が確認されたが,硬さには明確な傾向はみられなかった.ヒノヒカリも日本晴とほぼ同様の傾向を示したが,粒厚が小さくなるのに伴う各食味評価項目の低下程度が日本晴に比べ小さかった.各区の粒厚1.9 mm以上の玄米について,穀粒判別器により整粒と白未熟粒を選別し,整粒と白未熟粒を混合(整粒割合100,75,50,25,0%)して,基準米を整粒割合75%の玄米として食味官能試験を行った.整粒割合が低下(白未熟粒割合が増加)するほど,総合評価,外観,味,粘り,硬さが低下する傾向が認められた.食味関連形質間の相関関係を検討したところ,粒厚は総合評価,外観,味,粘り,アミロース含有率,最高粘度,ブレークダウン,整粒割合と正の,タンパク質含有率と負の相関関係(P<0.001)がみられた.粒厚が大きいほど整粒割合が高く(白未熟粒割合が低く),タンパク質含有率が低く,アミロース含有率は高まるものの,アミログラム特性に優れ,食味に優ることがわかった.白未熟粒割合と総合評価,外観,味,粘り,アミロース,最高粘度,ブレークダウンと負の,タンパク質と正の相関関係(P<0.001)がみられ,白未熟粒が増えるとタンパク質含有率が高まり,アミロース含有率が低下しても,アミログラム特性は低下して,食味が劣ることがわかった.また,硬さとの間にも負の相関関係(P<0.05,0.1)がみられ,白未熟粒が増えると柔らかくなる傾向が認められた.対照区の玄米は整粒と白未熟粒のタンパク質含有率の相違は小さかったことから,通常栽培で発生する白未熟粒の食味低下にはタンパク質やアミロース以外の要因が関係していると推定された.

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© 2013 日本作物学会
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