日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
関東地方の二毛作体系における発酵粗飼料用大麦生産の予備的検討
石川 哲也箭田 佐衣子阿部 薫
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2013 年 82 巻 3 号 p. 270-274

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抄録

関東地方の水田において,二毛作の六条大麦とイネをともに発酵粗飼料(WCS)として生産する可能性について,予備的検討を行った.茨城県つくばみらい市の中央農研谷和原水田圃場において,2001年から2012年まで,3品種・系統を供試して10月下旬~11月下旬に播種し,苗立ち,生育ステージと乾物生産を調査した.すべての試験区で前作と後作に飼料用イネを栽培した.供試品種・系統は4月上旬~下旬に出穂し,出穂後約30日の糊熟後期(収穫期)は5月中旬~下旬となり,後作の飼料用イネは6月中に支障なく作付できた.収穫期の地際刈り乾物重は,2007年の関東皮81号が1122 g m-2と最大だったが,倒伏も生じた.さやかぜは2010年標準播種区と2011年標準施肥区で1000 g m-2を上回り,全刈り乾物収量もすべての試験区で700 g m-2を上回った.収穫期の乾物率はほぼ30%以上で,ダイレクト収穫が可能であった.品種・系統を込みにすると,400本 m-2以上の穂数で,地際刈り乾物重がほぼ1000 g m-2に達した.飼料用イネとの9組み合わせにおける二毛作の合計地際刈り乾物重は平均で2588 g m-2となり,このうち六条大麦の比率は平均で38.7%だった.収穫期地際刈り乾物の飼料成分では,さやかぜの粗タンパク質含量は約6%で,推定可消化養分総量(TDN)は60%を上回った.以上の結果から,関東地方の水田において,飼料用イネと六条大麦の二毛作によるWCS生産が可能であると判断された.

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© 2013 日本作物学会
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