日本作物学会紀事
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栽培
水稲生産における好気発酵液肥の稲わら腐熟促進剤および窒素肥料としての施用効果の評価
平井 康丸猿田 恵輔河合 憲三首藤 大比古山川 武夫望月 俊宏井上 英二岡安 崇史光岡 宗司
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2013 年 82 巻 4 号 p. 325-336

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抄録

近年,水稲生産におけるコスト・環境負荷・エネルギー消費低減の観点から,し尿や汚泥を原料として製造される好気発酵液肥(液肥)の利用促進の気運が高まっている.そこで本研究では,稲わらの腐熟促進剤および窒素肥料としての液肥の施用効果を2009年と2010年の2年間の連用試験により評価した.腐熟促進剤の施用効果は,稲体の地上部乾物重,全窒素含量(T-N),窒素保有量の面からは確認されなかった.窒素肥料としての効果は,基肥として全層施用する場合は,アンモニア態窒素(NH4-N)の割合が7割程度あれば,化学肥料と同等であり,穂数は同程度確保された.一方,NH4-Nの割合が低い場合は,乾物重,T-N,窒素保有量が低下し,穂数が減少する傾向であった.追肥として表面施用する場合は,NH4-Nの揮散損失を伴うため窒素保有量が小さくなり,籾数の減少を招くことが示唆された.また,NH4-Nの割合が低い場合は,窒素吸収が緩やかになり登熟期の窒素栄養状態が低下した.これにより,2010年の出穂後20日間の平均気温が26.7℃の高温条件において,千粒重が低下したと推察された.以上の収量構成要素の低下により,精玄米重は小さくなる傾向であった.液肥の窒素肥料としての効果は,NH4-Nの割合に依存するため,その成分変動は利用上の問題と考えられる.

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© 2013 日本作物学会
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