日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
土壌の塩濃度と量の違いがイネの水利用と乾物生産に及ぼす影響
哈 布日津田 誠平井 儀彦
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2014 年 83 巻 1 号 p. 32-38

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抄録

塩ストレスと同時に水ストレスが作物生産を低下させることが増えると指摘されているので,塩濃度と量が異なる土壌においてイネの水利用と乾物生産および根成長の関係を明らかにした.容量の異なるポットに1~10 kgの土壌を入れ,各土壌1 kgあたり1gと2 gの塩化ナトリウム (NaCl) を入れた溶液を土壌重の50%加える2区およびNaClを加えない区を設けた.耐塩性品種IR4595-4-1-13と普通品種日本晴を移植して,その後給水しなかった.葉身の伸長停止で成長が止まったものとし,その日のイネの乾物重とNa+含有率および土壌残存水分量を測定した.地上部と根の乾物重は土壌の量が多いほど大きく,土壌NaCl濃度が増えるほど低下した.地上部乾物重は,地上部Na+含有率の増加にしたがい低下した.土壌残存水分量は土壌の量とNaCl濃度が高いほど多かったため,蒸発散量は土壌NaCl添加によって低下した.そして地上部乾物重は蒸発散量に比例的に大となった.土壌残存水分含有率はNaCl無添加土壌では根が十分に成長して低い値であったが,塩濃度が高く量が多い土壌では根の成長が小さく土壌残存水分含有率は高かった.以上から塩土壌においてもイネの乾物生産は蒸発散量に比例的に大となると同時に蒸発散量の低下はイネ根の成長阻害によって利用できる土壌水分量が減少するためであると考えられた.

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© 2014 日本作物学会
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