日本作物学会紀事
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栽培
平均気温と気温日較差が寒冷地における湛水直播水稲の出芽・苗立ちに及ぼす影響
古畑 昌巳原 嘉隆
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2014 年 83 巻 3 号 p. 203-209

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抄録

全国で水稲直播栽培の普及面積が最も大きい北陸地方でも普及程度は地域によって異なり,内陸部では比較的定着傾向が認められるものの,沿岸部では定着しにくい傾向がある.一般に沿岸部では海風があり,海風によって日中の気温が上昇しにくいことから,平均気温が同じであっても,風が気温日較差を小さくすることによって湛水直播水稲の出芽・苗立ちおよびその後の生育経過に影響していることが考えられる.そのため,野外のポット試験で防風区と無防風区を設置して,出芽・苗立ちを比較した結果,防風区は,無防風区に比べて最高気温が高まって気温日較差が大きくなり,出芽・苗立ち率が向上した.次に,催芽種子と恒温器を利用して,異なる平均気温,気温日較差条件で出芽・苗立ちを調査した結果,気温日較差の影響は,播種後低温条件が播種後高温条件に比べて大きかった.また,播種後低温条件では,気温日較差が大きい区は気温日較差が小さい区に比べて出芽・苗立ちは早まり,茎葉部乾物重が大きい傾向を示した.さらに,出芽時における出芽率の実測値とアレニウス式 (温度依存反応式) による推定値はほぼ同様の推移を示した.

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© 2014 日本作物学会
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