日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
縮緬じわが生じたダイズ子実の吸水特性と発芽特性に関する研究
中山 則和大野 智史細野 達夫関 正裕
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2014 年 83 巻 3 号 p. 232-241

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抄録

縮緬じわが生じたダイズ品種「エンレイ」の種子について,吸水特性,冠水処理時の障害の発生程度,種子活力を,しわの生じていない整粒との比較で調査した.冠水条件下の種子の吸水速度に縮緬じわ粒と整粒で有意差は認められなかったが,冠水後の縮緬じわ粒にのみ外観に凹みや括れによる変形が見られたことから,縮緬じわ粒では種子の膨潤が不均等に起こっていることが示唆された.種子の臍部からの吸水速度は,吸水開始から3時間までは縮緬じわ粒と整粒に有意差は見られなかったが,3時間以降では縮緬じわ粒で有意に高くなり,6時間後の吸水量は整粒に比べて40%多くなった.一方,縮緬じわ粒の側面部と背面部からの吸水は,整粒に比べてそれぞれ12,16%低かった. 24時間の冠水処理を施した種子の出芽率は,縮緬じわ粒で整粒よりも有意に低かった.さらに,冠水処理した縮緬じわ粒の実生では,整粒に比して,子葉の損傷程度は大きく,生育量は小さかった.老化促進試験により評価した種子活力は,縮緬じわ粒が整粒よりも低かった.以上の結果から,縮緬じわが生じた種子は,外観品質が損なわれているのみならず,吸水特性が変化しているとともに,整粒に比べて冠水障害を受けやすいと判断された.縮緬じわ粒において冠水障害が重度に生じた原因の詳細は明らかではないが,種子の不均等な膨潤により種子組織の物理的な破壊が助長された可能性や,縮緬じわ粒の種子活力を低下させる何らかの要因が関与している可能性が考えられた.

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© 2014 日本作物学会
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