抄録
鶏糞は,山口県南部を中心に小麦・水稲二毛作体系において,化学肥料の代替えとして小麦作付前の秋に散布されている.本研究では,化学肥料を一切用いない鶏糞施用区を設けて,鶏糞が水稲ならびに小麦の収量に及ぼす効果を土壌中の全窒素,可給態燐酸,交換性加里への効果とあわせて調査した.小麦の収量は,鶏糞施用区が鶏糞なし区より,穂数,一穂粒数とも多く,千粒重も重かったことから多かったが,化学肥料を用いた慣行栽培区よりは少なかった.水稲の収量は,鶏糞施用区が鶏糞なし区とほぼ同じであり,慣行栽培区よりは少なかった.土壌中の全窒素は,鶏糞施用区,鶏糞なし区ともに,小麦収穫後の水稲栽培の前と後とで同じであったものの,可給態燐酸,交換性加里は,鶏糞施用区では水稲栽培後が栽培前より低かった.鶏糞は,窒素成分で散布直後の小麦に肥効がみられたものの,その後の水稲には肥効がなかった.一方で,燐酸・加里成分では小麦,水稲を通じて肥効があったことが示唆された.