日本作物学会紀事
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栽培
適正子実タンパク質含有率からみた中華めん用コムギ品種 「ちくしW2号」 の穂揃期後の窒素追肥時期
石丸 知道荒木 雅登荒木 卓哉山本 富三
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2015 年 84 巻 2 号 p. 155-161

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抄録

中華めん用コムギ品種「ちくしW2号」 において,子実タンパク質含有率が12%以上となる穂揃期後の窒素追肥時期について重窒素標識硫安(以下,15N標識硫安)を用いて明らかにした.穂揃期および穂揃期後 7日の追肥では,生産年の違いに関係なく,安定的に子実タンパク質含有率が12%以上と高かった.また,成熟期における追肥窒素利用率および追肥窒素寄与率(子実窒素含有量に占める穂揃期後追肥由来の窒素含有量の割合)と穂揃期追肥時期との間には,有意な負の相関関係が認められた.穂揃期および穂揃期後 7日の追肥では,子実における追肥窒素利用率が概ね60%で,子実窒素含有量に占める穂揃期後追肥の寄与率が30%と高かった.穂揃期後14日の追肥では,施肥後の降雨の有無によりコムギの窒素吸収が影響を受け,穂揃期後21日および28日の追肥では,追肥窒素利用率が低く,寄与率も低かったことから成熟期の子実窒素含有量が少なく,子実タンパク質含有率は安定して12%以上を確保できなかった.これらのことから,硫安を施肥する場合,穂揃期後の追肥によって子実タンパク質含有率が安定して12%以上となる追肥時期は,追肥窒素利用率が60%,追肥窒素寄与率が30%程度以上となる穂揃期および穂揃期後 7日の間と判断された.

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© 2015 日本作物学会
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