日本作物学会紀事
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栽培
光エネルギー利用効率と物質生産および子実収量からみたキノア品種「NL-6」の最適栽植密度の検討
磯部 勝孝佐藤 竜司坂本 成吾新井 達也宮本 美沙肥後 昌男鳥越 洋一
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2015 年 84 巻 4 号 p. 369-377

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抄録

本研究ではキノアの品種「NL-6」の光エネルギー利用効率と物質生産量を高めることで多くの子実収量を得る栽植密度について検討した.試験は3 ヵ年行い,2012 年と2013 年は畝幅を50 cm または30 cm に固定して,栽植密度を変えて試験を行った.2014 年は栽植密度を固定して,畝幅と畝当たりの個体数を変えて試験を行った.畝幅50 cm の場合,開花盛期や子実肥大盛期の吸光係数や地際相対照度は区間に差がなく開花盛期から子実肥大盛期の個体群生長速度や子実収量にも差がなかった.畝幅30 cm の場合,1 m2 当たりの個体数を100 個体から400 個体に増加させると開花盛期や子実肥大盛期の吸光係数が高まり,それに伴って地際相対照度が低下した.しかし,開花盛期から子実肥大盛期の個体群生長速度や子実収量に区間差が認められなかった.さらに栽植密度を固定して畝幅を15 cmから60 cmに設定したところ,畝幅が狭くなるのに伴い開花盛期や子実肥大盛期の吸光係数が高まり,地際相対照度が低下した.しかし,開花盛期から子実肥大盛期の個体群生長速度や子実収量には区間差が認められなかったが,畝幅が広くなると分枝の穂が発達して子実収量を確保することが明らかになった.これらのことからキノア品種 「NL-6」 は 1 m2 当たり50 個体から100 個体以上確保できれば畝幅に関係なく子実収量は一定になり,それ以上の栽植密度にしても子実収量はあまり増加せず,最適な栽植密度は1 m2 当たり 50 個体から100 個体であると考えられた.さらに3 年間のデーターを込みにして子実収量と様々な生育パラメータとの間での相関関係を調べたところ,子実収量は子実肥大期の地上部乾物重と高い正の相関関係にあることが明らかになった.従って,キノアの品種 「NL-6」 の子実収量を高めるためには子実肥大期の地上部乾物重を高めればよいと考えられた.

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© 2015 日本作物学会
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