日本作物学会紀事
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栽培
コムギにおける収量構造の品種間差異
塩津 文隆豊田 正範楠谷 彰人
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2015 年 84 巻 4 号 p. 378-385

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抄録
1粒重とm2あたり粒数ならびに出穂期と成熟期の全乾物重のデータを用いて,コムギの国内新旧品種ならびに外国品種計50品種のソース・シンク比による収量構造の違いを明らかにした.シンクの潜在能力を評価するために,開花期に穂の上部2/3を切除し,この穂に着生した粒の粒重を限界1粒重(PKW)として測定した.穂を切除しない無処理の粒重を1粒重(KW)とし,潜在的能力に対して実際に充填できている割合をシンク充填歩合(KW/PKW)としてソース・シンクのバランスを評価した.なお,出穂期から成熟期までの全乾物重の増加量を収量の 「出穂後同化分」として評価し,1粒重と粒数の積で表される収量のうち,出穂後同化分を除いた 「出穂前蓄積分」の収量に対する割合(出穂前蓄積分割合)を評価した.シンク充填歩合は,1980年以後に育成された国内品種が平均値で0.783と,それ以前に育成された国内品種の0.730に比べて高かった.外国品種では,出穂期の遅い品種で0.751~0.810と高かった.出穂前蓄積分割合は,1980年以前に育成された品種で30%を超える高いものが21品種中9品種みられた.外国品種の中には負の値を示すものもあり,収量生産が出穂後同化分のみで賄われていたことをうかがわせた.これら50品種をシンク充填歩合0.741を境として高いもの(I)と低いもの(II)に,出穂前蓄積分割合21.2%以上のもの(A),0~21.2%のもの(B),0%以下のもの(C)で分類した.
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© 2015 日本作物学会
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