日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
湛水直播水稲における土壌還元処理とPythium属菌接種による苗立ち率低下の品種間差異
田中 英彦田中 文夫山崎 信弘
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2016 年 85 巻 2 号 p. 168-172

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抄録

高い苗立ち性を示す外国稲を含む水稲8品種を供試して,風乾した無代かき土 (酸化土:OS) と稲わら粉末を添加した代かき土 (還元土:RS),およびPythium属菌接種の有無 (接種:IPと無接種:NP) の組み合わせ処理を行い,出芽,苗立ちに及ぼす影響を検討した.播種1日後の酸化還元電位 (Eh) は,OS区の400 mVに対して,RS区では-136 mVと強還元の条件が得られた.OS区の出芽率が94%であったのに対して,RS区では75%と低下した.「Alborio-J1」,「キタアケ」,「胆振早生」は,OS区に比較してRS区で有意に出芽率が低下した.「Italica Livorno」と「Arroz da Terra」はRS区における出芽率の低下程度が小さく,土壌還元に対する耐性が高かった.Pythium属菌接種の影響では,NP区の苗立ち率が80%であったのに対して,IP区では14%と大きく低下した.すべての品種でNP区に比べIP区で苗立ち率は有意に低下したが,「Dunghan Shali」の低下程度が最も小さかった.なお,RS/IP区の苗立ち率はRS/NP区よりも低下したが,OS/IP区よりも高かった.これは,接種後の溶存酸素濃度の低下により,Pythium属菌の実生への感染が阻害されたためと推察された.

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© 2016 日本作物学会
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