日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
ゴマ (Sesamum indicum L.) のセサミンおよびセサモリン含量に関するダイアレル分析
大潟 直樹加藤 晶子
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2016 年 85 巻 3 号 p. 302-308

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抄録

国産ゴマの振興に向けて生産性の優れる高リグナン含有ゴマ品種の開発が求められている.その効率的,効果的な品種開発には,セサミンおよびセサモリン含量の遺伝性を解明することが有効である.本実験では,7種のゴマ遺伝資源を片側ダイアレル交配したF1植物およびF2植物について圃場栽培を行い,稔実した種子のセサミンおよびセサモリン含量を分析し遺伝性を検討した.その結果,F1とF2のダイアレル分析結果に大きな相違は認められず,Vr/Wrグラフの解析からセサミンおよびセサモリン含量にはエピスタシスの影響が無いと推定でき,相加・優性モデルが適合した.両含量ではともに相加分散が優性分散を上回り,平均優性度が0.58から0.88と部分優性であった.優性効果は,含量が少ない方向に作用した.狭義の遺伝率は0.859から0.903と推定され,ゴマの他形質と比較して高い値であった.セサミンおよびセサモリン含量の遺伝性は多くの点で一致し,また各世代のセサミン含量とセサモリン含量との間には統計的に有意な正の相関関係が認められたことから,両成分含量の多少は同じポリジーン系で制御されていると考えられた.一方,異なる花粉親によって受精させたF1種子のセサミンおよびセサモリン含量は,F1種子ではなく専ら種子親の遺伝子型に依存していた.以上のことから,セサミンおよびセサモリン含量がともに高い品種の開発には,初期世代から表現型に基づいた選抜育種が有効と考えられた.


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