日本作物学会紀事
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栽培
水稲多収品種における登熟期気象条件と収量との関係の品種間差
長田 健二大角 壮弘吉永 悟志中野 洋
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2016 年 85 巻 4 号 p. 367-372

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抄録

水稲多収品種における登熟期気象条件と収量との関係とその品種間差異を明らかにする目的で,異なる栽培地における圃場試験データを収集し,出穂後40日間における単位日射量当たり収量(Y/R)と平均気温(T)の関係を整理した.多収品種「べこあおば」,「モミロマン」,「タカナリ」,「北陸193号」と対照品種(「日本晴」,「アキヒカリ」)についてTがおおむね22~29℃の条件で得られた東北~四国での栽培試験データを品種ごとに収集し,Tの各温度階層におけるY/Rの最大値を抽出して解析すると,両者の関係は2次式で近似できることが確認された.この2次式を品種間で比較したところ,2次式の最大値は対照品種と比較して「べこあおば」,「タカナリ」,「北陸193号」では高く,「モミロマン」では対照品種とほぼ同等であった.一方,その最大値が得られるT値については「べこあおば」は21.1と対照品種で得られた値21.2とほぼ一致したのに対し,インド型品種「タカナリ」,「北陸193号」および日印交雑型品種「モミロマン」では23.9~24.7と,対照品種より高い値が得られた.以上の結果より,Tに対するY/Rの反応には多収品種間で差があり,特に「タカナリ」,「北陸193号」,「モミロマン」では従来の日本型品種と比較して登熟適温が3℃程度高いものと考えられた.


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