日本作物学会紀事
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品質・加工
日本麺用コムギにおけるGlu-A1およびGlu-D1座サブユニット構成の違いがタンパク質組成に及ぼす影響
谷中 美貴子高田 兼則石川 直幸高橋 肇
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2016 年 85 巻 4 号 p. 403-410

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抄録

本研究は,Glu-A1座およびGlu-D1座の遺伝子に支配される高分子量グルテニンサブユニットの構成が異なる4種類の日本麺用コムギの準同質遺伝子系統を,異なる開花期窒素施肥量で栽培し,得られた小麦粉を用いて小麦粉タンパク質含有率の違いがタンパク質組成に及ぼす影響について解析したものである.サイズ排除高速液体クロマトグラフィーにより分画された可溶性ポリマー(EPP),可溶性モノマー(EMP),不溶性ポリマー(UPP)の全タンパク質に占める割合(EPP(%),EMP(%),UPP(%))は,準同質遺伝子系統間で異なり,Glu-D1座サブユニット2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットの有無でUPP(%)に有意な差はなかったが,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,EPP(%),EMP(%)が高く,UPP(%)が低くなった.タンパク質含有率の増加に対し,EPP, EMP, UPPの含有率の増加程度(回帰直線の傾き)は系統間で有意な差はなかったが,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,EPP含有率の増加程度が大きく,UPP含有率の増加程度が小さい傾向にあった.Glu-D1サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットが欠失すると,タンパク質含有率の増加に対するSDS沈降量の増加程度は有意に小さくなった.この結果はタンパク質含有率の増加に対するEPPやUPPの増加程度の違いに由来すると考えられた.以上の結果より,Glu-D1座サブユニット2.2+12を持つ場合,Glu-A1座サブユニットを導入することで生地物性の向上が期待できると考えられた.


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© 2016 日本作物学会
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