日本作物学会紀事
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栽培
関東地域の地下水位制御システム (FOEAS) 現地圃場における不耕起と狭畦がダイズの生産性に及ぼす影響
前川 富也島田 信二浜口 秀生加藤 雅康藤森 新作
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2016 年 85 巻 4 号 p. 391-402

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抄録

日本のダイズ作は約80%が水田転換畑で栽培され,土壌水分の乾湿がダイズ生産に大きな問題を生じさせている.近年,地下水位をコントロールするシステムが開発され,栽培方法との組み合わせの効果についての情報が求められている.そこで,地下水位制御システム(FOEAS)のメリットを生かした関東地域におけるダイズ栽培方法の確立を目的として,FOEAS圃場において,不耕起狭畦栽培,ロータリ狭畦栽培,慣行ロータリ栽培の3つの栽培法による生育,収量,作業性等への影響を解析した.不耕起狭畦栽培においてFOEAS圃場は対照圃場より,2011,2012年平均で収量が25%,窒素固定量が24%増加しており,FOEAS導入の効果が認められた.FOEAS圃場における不耕起狭畦栽培では,苗立率,生育量,莢数,粒数,百粒重の増加によって,ロータリ狭畦栽培よりも12%の増収( 2010-2012年平均),慣行ロータリ栽培より69%の増収( 2011,2012年平均)となった.また,刈り損じなどを含む実際の収穫量であるコンバイン収量は,倒伏指数が低いことにより,2010,2011年平均で不耕起狭畦栽培はロータリ狭畦栽培に比べ15%,慣行ロータリ栽培に比べて40%増収した.増収のほかに,不耕起狭畦栽培は,ロータリ耕起の栽培方法と比べて,地耐力が高く,降雨後も速やかに作業ができること,播種スピードが速いこと,雑草発生量が少ないこと,中耕培土を省略できることなど,作業性や圃場管理の点で多くの利点を有する.よって,FOEAS圃場と不耕起狭畦栽培の組み合わせは,ダイズの安定生産に大きく貢献できる栽培法であると考えられる.


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