日本作物学会紀事
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栽培
開花期尿素葉面散布はコムギ(Triticum aestivum L.)子実カドミウム濃度を高める
石川 直幸石岡 厳
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2017 年 86 巻 1 号 p. 15-23

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抄録

コムギ,とりわけパン用コムギは加工適性向上のためタンパク質含有率を高める必要があり,そのためには開花期頃の窒素追肥が重要となる.しかし窒素追肥を行うと子実カドミウム(Cd)濃度が高まることが知られており,その理由は窒素肥料による土壌 pH の低下やイオン交換によって,土壌に吸着されていた Cd が脱着して植物に吸われやすくなるためであると考えられている.そうであれば,尿素の葉面散布では子実 Cd が高まらないと期待される.そこで,雨除けポット栽培と圃場栽培において,開花期に尿素を土壌施用または葉面散布し,子実 Cd 濃度等を調べた.その結果,尿素の土壌施用でも葉面散布でも,また尿素液がポットの地面に落下しないようにポットをペーパータオルで覆っても,無施用と比べて子実タンパク質含有率と子実 Cd 濃度が高まり,子実タンパク質含有率と子実 Cd 濃度の間に正の相関が認められた.土壌施用でも葉面散布でも,無施用と比べて葉の黄化が遅れ,成熟期が遅くなり,ポット栽培では千粒重および子実収量が増加し,子実の Cd,K,Ca,Mg 蓄積量が増加した.窒素追肥により植物体の活性が高く維持されたために Cd の吸収が増えたと推測される.たとえ葉面散布であっても,タンパク質含有率を高めようとすれば子実 Cd 濃度が高くならざるを得ないと考えられる.

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