日本作物学会紀事
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栽培
北海道において疎植栽培されたイネ品種「ななつぼし」の生育,収量および玄米品質
林 怜史
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2017 年 86 巻 2 号 p. 129-138

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抄録

寒地である北海道の水稲移植栽培では,出穂始めから終わりまでの期間を短くし,整粒歩合を確保するため,密植栽培が推奨されているが,経営の大規模化を背景に,省力化,低コスト化を目的とした疎植栽培への要望が高まっている.そこで,本研究では,水稲品種「ななつぼし」を用いて疎植栽培を行った際の生育,収量,品質について調査を行った.2013年から2015年にかけて,北海道農業研究センター (札幌市) 内の水田において,条間30 cmの田植え機を用いて,株間4段階,植え付け本数2段階を組み合わせた8条件で移植した.試験を行った3か年は,いずれも平年並み以上の気温,日射量となったが,植え付け本数の削減は登熟歩合の低下による有意な減収や未熟粒の増加を招いた.株間を広げることによる減収は認められなかったが,整粒歩合が低下し,未熟粒が増加する傾向が見られた.一穂籾数と整粒歩合との間には有意な負の相関がみられ,登熟期の気温が低い (出穂後40日間の積算気温800℃未満) 条件では一穂籾数が70粒を上回ると整粒歩合が70%を下回った.植え付け本数標準区では,株間22 cmで一穂籾数は70.7粒であったことから,整粒歩合70%以上を確保するという点では,株間22 cmまでの疎植にとどめることが望ましいと考えられた.

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© 2017 日本作物学会
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