日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
宮城県の津波被災後の大区画整備圃場におけるチゼルプラウ耕グレーンドリル播種体系によるダイズの晩播狭畦密植栽培
松波 寿典齋藤 秀文大谷 隆二関矢 博幸篠遠 善哉冠 秀昭中山 壮一西田 瑞彦高橋 智紀浪川 茉莉林 和信長坂 善禎片山 勝之
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2017 年 86 巻 2 号 p. 192-200

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抄録

東日本大震災による津波被災農地では,震災後,離農者が急増する一方で,限られた担い手農業者に農地が集積され,営農規模の拡大が進展している.このため,少ない担い手で大規模経営を永続させる省力的な安定生産技術の開発が急務となっている.そこで本研究では,津波被災復興後,1 ha以上の大区画圃場として整備された宮城県名取市と東松島市の現地圃場において乾田直播水稲,コムギ,ダイズの2年3作水田輪作体系下におけるチゼルプラウ耕グレーンドリル播種体系によるダイズの晩播狭畦密植栽培に適した品種と条間を明らかにすることを目的とした.その結果,「タンレイ」に比べ,耐倒伏性に優れ,青立ちが少なく,成熟期と収穫適期が早い「あきみやび」は着莢期以降の莢実の乾物増加量が多く,成熟期の地上部乾物重と百粒重が重く,収量性が優れていた.また,グレーンドリルにより晩播狭密植栽培した「あきみやび」では条間24 cmから36 cmの範囲では,生育量,収量,品質に明瞭な差はなく,条間24 cmで倒伏が少ない傾向が認められた.以上のことから,宮城県津波被災後の1 ha規模の大区画圃場での2年3作水田輪作体系下におけるチゼルプラウ耕グレーンドリル播種体系による晩播狭畦密植栽培には,耐倒伏性に優れ,青立ちも少なく,生育期間が短い特性を備え,着莢期以降の乾物生産能と莢実への乾物蓄積能が優れる「あきみやび」が適し,播種時の条間を24 cmとすることで倒伏が少ないことが明らかとなった.

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© 2017 日本作物学会
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