日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
カリ無施用による水稲ポット栽培が玄米への放射性セシウム移行係数に及ぼす影響
石川 哲也佐久間 祐樹齋藤 隆江口 哲也藤村 恵人松波 寿弥太田 健高橋 義彦木方 展治
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2017 年 86 巻 2 号 p. 186-191

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抄録

交換性カリ含量が低下した条件での玄米への放射性セシウムの移行リスクを評価するため,2015年に福島県内21地点で採取した水田土壌を1/2,000 aポットに充填し,カリ肥料を施用せずに水稲品種「天のつぶ」を移植栽培した.収穫時の土壌中交換性カリ含量と,土壌中およびわら・粗玄米中放射性セシウム濃度を測定し,交換性カリ含量が土壌から粗玄米への放射性セシウム移行係数に及ぼす影響を検討した.収穫時の土壌中放射性セシウム濃度には有意な地点間差が認められ,134Csと137Csの合計値における上位7地点はいずれも中通りであり,1050〜2940 Bq kg–1の範囲となった.収穫時の土壌中交換性カリ含量には有意な地点間差が認められ,12地点で5 mg 100 g–1を下回った.粗玄米中137Cs濃度は2.8〜68.3 Bq kg–1の範囲で,有意な地点間差が認められた.わら中および粗玄米中137Cs濃度を土壌中137Cs濃度で除して算出した137Cs移行係数は,収穫時土壌中交換性カリ含量が圃場試験より大幅に低下したため顕著に高まり,土壌中交換性カリ含量の範囲を揃えても,既往の圃場試験で得られた値より高くなる傾向を示した.さらに,粗玄米中137Cs濃度とわら中137Cs濃度の比率は栽培前土壌中交換性カリ含量が低いほど高まり,稲体カリウム濃度の低下が粗玄米への137Cs移行を助長する可能性が示唆された.

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© 2017 日本作物学会
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