日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
ポットに深播された水稲種子の出芽性と中茎長および低位節間長との関係
赫 兵豊田 正範楠谷 彰人
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2017 年 86 巻 3 号 p. 243-250

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抄録

乾田直播栽培に適した深播耐性品種の育成に役立つ知見を得るために,日本の水稲50品種を供試し,種籾を7 cmの深さで播種した場合の出芽性を比較した.出芽率は94%~0%(平均59%),平均出芽日数は18.8日~11.4日(平均15.6日),出芽係数は7.19~0.56(平均4.04) に変異し,いずれにも有意な品種間差が認められた.出芽率と出芽係数との間には正,平均出芽日数と出芽係数との間には負の有意な相関関係が認められたが,平均出芽日数と出芽率との間に有意な相関関係はみられなかった.播種後日数(X) と出芽率(Y) との関係を検討したところ,両者の関係はY=100–a・exp(–b・X)の指数関数式によく適合した.そこで,常数b×103を出芽率増加指数,X切片を出芽開始期として品種間で比較した結果,品種による有意差が認められた.出芽開始期と出芽率増加指数を説明変数,出芽率と平均出芽日数を目的変数とする重回帰分析の結果,出芽開始期と出芽率増加指数の貢献割合は,出芽率に対しては25:75,平均出芽日数に対しては92:8であった.すなわち,出芽率には出芽率増加指数,平均出芽日数には出芽開始期が強く影響すると推測された.中茎長,第1節間長および第2節間長を説明変数,出芽開始期,出芽率増加指数,出芽率を目的変数とする重回帰分析の結果,中茎長,第1節間長,第2節間長の貢献割合は,出芽開始期に対しては56:40:4,出芽率増加指数に対しては18:32:50,出芽率に対しては6:40:54であった.これらより,日本品種において深播耐性品種を育成する上で最も重視すべき特性は第2節間長であり,次が第1節間長で,中茎長の意義は小さいと考えられた.

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© 2017 日本作物学会
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