日本作物学会紀事
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品種・遺伝資源
ダイズ大規模栽培における難裂莢性品種の減収軽減効果の解析
山田 哲也羽鹿 牧太船附 秀行高橋 浩司平田 香里菱沼 亜衣田中 淳一
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2017 年 86 巻 3 号 p. 251-257

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抄録

国内のダイズの主力品種である「フクユタカ」および「サチユタカ」の遺伝背景に,難裂莢性遺伝子pdh1と強連鎖するDNAマーカーを利用した連続戻し交雑により,難裂莢性を導入した「フクユタカA1号」および「サチユタカA1号」が育成されている.本研究では,これらの2品種を用いて,2012年から2014年の3ヵ年に,岡山県,兵庫県,愛知県および千葉県の一般圃場および,作物研究所の試験圃場において,コンバイン収穫機を用いた大規模な栽培試験 (計7試験) を実施し,機械化栽培におけるpdh1がもたらす難裂莢性による減収軽減効果を評価した.その結果,難裂莢性品種は原品種に比べて裂莢損失が有意に軽減され,コンバイン収量も難裂莢性品種の方が多かった.難裂莢性による減収軽減効果は試験によって異なり,収穫が遅れた場合など,裂莢損失の多発した試験ほどその効果は大きく,原品種と比較して40%以上の多収となった.また,pdh1による難裂莢性は,自然裂莢損失と,収穫時の裂莢損失の両方を軽減したが,自然裂莢損失を抑制する効果の方がより大きかった.難裂莢性の欠点として,コンバイン内でも裂莢せず,排出口から未脱粒なまま子実が排出される損失が想定されるが,本研究では排出損失は裂莢性の難易に対して一定の傾向が認められず,全子実量の3%以下であった.一般的な収穫条件では難裂莢性品種を原品種と置き換えることで,栽培や加工における対応の必要性を最小限に抑えながら実質的な収量の増加と安定に寄与することが期待できる.

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© 2017 日本作物学会
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