日本作物学会紀事
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栽培
熊本県のパン用コムギ品種ミナミノカオリにおける枯れ熟れ様登熟不良の発症パターンと発症要因の探索
荒木 英樹水田 圭祐八田 浩一中村 和弘松中 仁藤間 充丹野 研一高橋 肇
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2018 年 87 巻 1 号 p. 21-29

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抄録

コムギの枯れ熟れ様登熟不良は,登熟期間中に茎葉が早枯れし子実が軽くなる登熟障害で,発生原因は明らかにされていない.本研究では,熊本県のコムギ多収地域で発生する枯れ熟れ様登熟不良の発生要因を解明するために,土壌改良剤や窒素施肥の施用効果,植物体の窒素状態,品種の感受性差異を調査した.2011/12年と2012/13年には,施肥試験を実施した圃場で開花直後~開花後15日までの間に葉や穂が早枯れした.千粒重は,未発症圃に比べて2011/12年には15%減少し,2012/13年には30%も減少した.両年とも,症状はカルシウムやケイ酸,鉄を含む土壌改良剤では軽減しなかった.2012/13年試験の発症圃では,栄養成長期の生育が旺盛であった.早枯れの程度および粒重や葉身相対含水率の低下程度は,窒素追肥を施用しない処理区で大きく,実肥を増肥した処理区でも軽減しなかったが,基肥を増肥した処理区では小さくなった.穂を切除した処理区でも,葉色計値や相対含水率の低下程度が小さかった.稈あたりの窒素含有量は発症圃で多かった.土壌の理化学性は発症圃と未発症圃で大きな違いはなかった.既報で枯れ熟れ様登熟不良耐性が弱と評価された品種は,本地域の発症圃でも症状が重かった.枯れ熟れ様登熟不良を発症したミナミノカオリは,子実の窒素要求量が高いために茎葉からの窒素再転流が早く起こり,水吸収能低下や葉の枯れ上がりが早くに進んだと考えられた.

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