日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
栽培
東北地域における飼料用米向け水稲品種・系統の収量性
福嶌 陽太田 久稔横上 晴郁津田 直人
著者情報
ジャーナル フリー

2018 年 87 巻 1 号 p. 30-36

詳細
抄録

東北地域における飼料用米向け水稲品種・系統の収量性を明らかにする目的で,既存の多収品種の「ふくひびき」,「べこあおば」,新しい多収品種・系統の「いわいだわら」,「奥羽418号」を用いた生産力検定試験の結果を解析した.飼料用品種は主食用品種と比較して,標肥移植栽培においてすでに多収であり,多肥移植栽培によってその収量差は拡大した.飼料用4品種・系統の中では,多肥移植栽培における収量に有意差は認められなかった.一方,極多肥移植栽培においては,稈長が短く耐倒伏性に優れた「奥羽418号」,「べこあおば」の粗玄米重が多い傾向にあった.しかし,これらの2品種・系統の極多肥栽培による増収効果は僅か2%であったことから,極多肥栽培により収量の飛躍的向上を目指すことは困難であると判断した.さらに,その後に育成された新系統を含めた飼料用向け10品種・系統と主食用6品種の多肥移植栽培における収量性を比較・解析した.その結果,すべての飼料用向け10品種・系統に共通の特性として,穂数が少なく,1穂シンク容量 (=1穂籾数×1粒重) が極めて大きいことが認められた.しかし,既存の多収品種「ふくひびき」,「べこあおば」を明らかに上回る多収の品種・系統は認められなかった.以上の結果から,さらなる極多肥品種を育成することは困難な現況にあり,むしろ安定多収や大規模化・低コスト化を可能とする品種を育成することが重要であると考察した.

著者関連情報
© 2018 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top