日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
トリカブトの塊根の大きさとアコニチン系アルカロイド成分含有率との関係および塊根内での成分の分布について
石﨑 昌洋川口 數美高橋 行継和田 義春
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2018 年 87 巻 1 号 p. 76-82

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抄録

トリカブト(Aconitum japonicum Thunberg)は,キンポウゲ科の多年生草本で,その塊根はアルカロイドを含有する生薬として利用される薬用作物である.漢方製剤の原料に使用するうえでアルカロイドの成分含有率は極めて重要である.トリカブトの成分含有率は塊根の大きさと関係があるとされるが,その具体的な関係は明らかではない.本研究では,塊根の大きさと成分含有率の関係を調査した.塊根の総アルカロイド含有率は,塊根の乾物重と有意な負の相関関係にあり,35 g以上ではほぼ一定となる傾向を示した.圃場試験において塊根を大(30 mm以上),中(20 mm以上),小(20 mm以下)の3つに分級して,総アルカロイド,メサコニチン,ヒパコニチンおよびアコニチン含有率を調査したところ,塊根が大きくなると成分含有率は低下する傾向がみられ,成分含有率を低く抑えるためには,大きな塊根を生産する栽培法の確立が必要であった.しかし,成分含有率には栽培環境による影響および栽培環境と塊根の大きさによる交互効果が有意であったことからさらなる研究が必要である.1つの塊根内では,塊根の両端,特に芽を含む頂端部分で成分含有率が高かった.このことが塊根が大きくなると成分含有率が低くなる要因の1つと考えられた.また,このことから,多数の検体を分析する必要が生じた場合には,分析試料の縮分には縦方向に分割することが必要であることが示された.

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© 2018 日本作物学会
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