日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
業務・加工用水稲品種「やまだわら」の多収条件
小林 英和長田 健二
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2018 年 87 巻 1 号 p. 67-75

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抄録

業務・加工用水稲品種「やまだわら」について,窒素施肥試験を実施するとともに,複数作期の栽培試験を比較して多収条件を検討し,それらをもとに平均単収の約1.5倍にあたる精玄米重800 g m–2以上達成のための栽培条件の提示を試みた.得られた最高収量は,2016年の施肥試験における877 g m–2であり,「やまだわら」の多収性が確認された.窒素施肥による増収効果は年次によって異なり,2016年は有意であったが,2015年は有意ではなかった.その際,両年次とも,施肥量の増量によって籾数は有意に増加していたことから,登熟の良否が収量の施肥反応における年次間差をもたらしていると考えられた.実際に,複数作期の試験結果を利用し,登熟期の気象条件と収量の関連を解析したところ,出穂後20日間の日射量が高いほど収量も高くなる傾向が認められた.一方で,出穂後20日間の平均気温と籾数が高いほど整粒歩合が低下する傾向も認められた.これらの結果をもとに,「やまだわら」において,一定の品質(整粒歩合60%以上)を確保した上で,精玄米重800 g m–2以上を達成する条件を検討したところ,試験地である広島県福山市では8月9~15日に出穂する作期を選択したうえで,精玄米重800 g m–2以上が実現可能な籾数(41~45千粒 m–2)を確保する窒素施肥が必要と考えられた.

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© 2018 日本作物学会
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