南西諸島のサトウキビ産業における砂糖生産性の向上には,既存の製糖用品種への多収性導入が重要である.本研究では,南西諸島の環境条件下で機能する多収要因の解明を目的として,サトウキビ野生種と製糖用品種との種間雑種を,再び製糖用品種と交雑して作出した戻し交雑第1世代(BC1世代)における多収性の3品種系統を対象として,乾物生産特性および地上部と地下部の生育特性について,既存の製糖用品種との比較を通じて検討した.根系調査に付随する土壌攪乱を勘案して圃場を5区画に分割し,それぞれ異なる日に地上部,地下部を収穫して乾物重や葉面積等を調査した.植え付け後237日目の原料茎重は,BC1世代の3品種系統が製糖用品種を30~58%上回った.また,BC1世代の3品種系統は,1) 生育初期における比葉面積が大きい,2) 葉面積指数および葉身乾物重が一貫して大きい,および3) 生育初期に根系が速やかに発達する,といった共通の特性を示した.光合成速度には製糖用品種とBC1世代の3系統との間に有意な差異は認められなかった.以上から,生育初期の比葉面積が大きく葉面積指数の増大に有利であること,および,速やかな根系発達により葉面積指数増大に伴う養水分要求量の増加に対応できることが,本研究で供試したBC1世代の3品種系統に共通する多収性の主要機作であることが示唆された.