日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
ダイズ品種「里のほほえみ」における裂皮粒の発生に及ぼす播種時期の影響
中山 則和山本 亮細野 達夫大野 智史
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2018 年 87 巻 2 号 p. 183-191

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抄録

北陸地域におけるダイズ品種「里のほほえみ」の裂皮粒抑止技術を確立するため,2014~2016年の同品種の栽培試験により得られた種子について,裂皮粒の発生様相と播種時期・環境条件との関係を調査した.裂皮の形状別では,種皮が不定形に裂けた不定形裂皮粒の発生が多く,線状に裂けた線形裂皮粒は少なかった.両裂皮粒とも6月中旬の晩播で発生は有意に減少し,特に不定形裂皮粒の減少が著しかった.同一年の同一播種日に限れば不定形裂皮の発生に種子粒大の影響が認められたが,3年間を通じて不定形裂皮の発生と粒大の間に有意な相関は認められなかったことから,晩播による不定形裂皮の減少には粒大以外の要因が主要因として関与したと考えられた.不定形裂皮粒率と開花始期の間には高い負の相関が認められ,播種時期そのものの早晩ではなく,播種時期の変化により開花時期が移動することが不定形裂皮の発生に影響を及ぼしていると推察された.開花始期以外では,不定形裂皮粒率と登熟日数ならびに登熟期の積算気温との間に比較的高い正の相関が認められた.開花始期は不定形裂皮の発生を推測する指標として有効と考えられ,上越地域では開花始期が7月23日頃以降となるように晩播することで不定形裂皮粒の発生量を5月下旬の標準播の50%以下に抑えられると推定された.線形裂皮については,裂皮粒率と登熟期の日射量の間に有意な正の相関が認められ,また,開花始期よりも播種日との相関が高かったことから,「里のほほえみ」の線形裂皮と不定形裂皮は発生機構が異なることが示唆された.

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