日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
石川県における育苗箱に高密度に播種した水稲稚苗の形質および本田での生育・収量・玄米品質
澤本 和徳伊勢村 浩司佛田 利弘濱田 栄治八木 亜沙美宇野 史生
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2019 年 88 巻 1 号 p. 27-40

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抄録

水稲稚苗移植栽培において,石川県をはじめとして北陸地域の育苗箱当たりの播種量は乾籾120~140 gと日本の他地域に比べて少ない.これは水田10 a当たりに使用する育苗箱数を多く必要とすることに繋がっている.本研究では,育苗箱数の低減を目指して,育苗箱当たり乾籾250 gおよび300 gの高密度播種が稚苗の苗質および本田での生育・収量・玄米品質に及ぼす影響を検討した.2水準の高密度で播種し15日または24~25日育苗した稚苗を,小面積を掻き取ることができるように改良した田植機を用いて1株当たり3~4本で移植した.移植時の苗の葉齢は3.0~3.6,草丈は8~12 cmで,欠株率は0.0~6.3%で連続欠株は無かった.10 a当たりの移植に使用した育苗箱数は250 g播種区で6.0~7.2箱,300 g播種区で4.7~6.0箱であった.2つの高密度播種区の出穂期および成熟期は移植時の葉齢差を反映して,慣行区の箱当たり100 gで播種した稚苗より1~2日遅かったが,最高茎数,穂数,精玄米重,整粒歩合および玄米タンパク含有率は100 g播種区と同等であった.高密度播種は,その育苗期の苗丈伸長や移植後の茎数の動態特性から,育苗期間および移植期が温暖な晩期移植作型に適していると考えられた.高密度に播種した水稲苗を用いる本法は,その苗に対応した田植機の導入が必要となるが,新たな育苗資材や特別な栽培管理を必要とせずに慣行稚苗栽培と同等の収量・品質を得ることが可能であることが示唆された.

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© 2019 日本作物学会
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