日本作物学会紀事
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栽培
石灰窒素散布後の耕起時期が漏生イネの出芽・苗立ちに及ぼす影響
大平 陽一白土 宏之川名 義明伊藤 景子今須 宏美佐々木 良治
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2019 年 88 巻 3 号 p. 168-175

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抄録

多用途向け多収性水稲品種に由来する漏生イネの発生を効果的に抑制するために,石灰窒素散布後の耕起時期が漏生イネの出芽・苗立ちに及ぼす影響を気象条件も考慮して検討した.ポット試験で土壌表面の種子に石灰窒素を散布し,適宜散水しながら3~20日経過後に石灰窒素,種子および土壌を混和して出芽させると,混和までの日数が長いほど出芽率が低下した.一方,石灰窒素散布直後の混和や乾燥条件では出芽が抑制されなかった.稲ワラを取り除いた圃場に種子を散播することで疑似的な脱落籾を作出した試験においても,石灰窒素散布直後に耕起すると漏生イネの苗立ち抑制効果が得られなかった.石灰窒素散布後に耕起を行う場合,散布日から耕起日までの平均気温が11~15℃で適度な土壌水分があれば,耕起までの期間を少なくとも2週間とすることで漏生イネの発生は抑制されると考えられた.稲ワラが有る条件でも,石灰窒素散布後に一定期間を経てから種子を土中に埋設すると越冬後の発芽率は低下することが明らかになった.しかし,稲ワラが無い条件と比較して石灰窒素の効果は半減以下になると推察された.

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© 2019 日本作物学会
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