日本作物学会紀事
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栽培
奈良県と山口県においてダイズ品種「サチユタカ」を密植しても増収しない要因の解明
村田 資治山下 紘輝稲村 達也
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キーワード: RUE, NDVI, 乾物重, 節数, ダイズ, 西日本
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2019 年 88 巻 4 号 p. 237-245

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抄録

本研究では,異なる環境・年次において栽培したダイズ品種「サチユタカ」の分枝の発生,受光量,日射利用効率および乾物生産を調査し,株間を慣行栽培の半分にして栽植密度を2倍にしても収量が増加しない要因を検討した.奈良県(2011年)と山口県(2017年)において,慣行区は20本m–2未満の栽植密度とし,密植区は慣行区と同一条間で株間を半分にし,30本m–2以上の栽植密度とした.播種は奈良では手播き,山口では機械播きとした.収量および莢数はいずれの地域においても5%水準で処理区間に有意差はなく,密植によって収量が高まるとはいえなかった.密植によって奈良では分枝の節数および莢数が減少し,山口では分枝の節数は減少しなかったが,主茎の節当り莢数が減少した.このように年次・試験地によって主茎と分枝の節数および莢数の発生様相は異なったが,最終的な莢数は慣行区と比較して密植区で増加しなかった.密植しても莢数が増加しなかった理由として,莢数の増加と密接な関係があるとされている開花期以降の乾物生産量が密植しても増加しなかったことが考えられた.乾物生産量は群落の受光量と日射利用効率で決定されるが,両地域において密植しても開花期以降の受光量および日射利用効率は慣行栽培と変わらなかった.成熟期の地上部乾物重および収穫指数も密植しても増加しなかった.これらのことから,「サチユタカ」において密植しても収量が増加しないのは,密植しても開花期以降の受光量および日射利用効率が向上しない,すなわち乾物生産量が向上しないことが要因の一つであると考えられた.

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© 2019 日本作物学会
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