短穂性の稲発酵粗飼料品種である,「たちあやか」と「たちすずか」は,牛の体内で消化率が低い籾の割合が低いことから,畜産農家から飼料としての評価が高く,普及が拡大しているが,採種効率が低いことが問題となっている.「たちすずか」では,幼穂形成期の窒素施用と疎植や晩植を組み合わせることにより精籾重が向上するが,「たちあやか」においては,幼穂形成期の窒素施用の効果は明らかになっているものの,その他の栽培管理の差異が種子の生産性に及ぼす影響について明らかとなっていない.そこで,2014年から2016年の3ヶ年にかけて,5.6株m–2から22.2株m–2の範囲で栽植密度が「たちあやか」の収量構成要素に及ぼす影響を調査した.その結果,「たちすずか」での過去の報告とは異なり,疎植条件ほど総籾数が増加する反応は「たちあやか」では認められず,栽植密度が総籾数に及ぼす影響は年次により傾向が異なった.この年次による反応の差には,穂肥から出穂までの日数の差異が関係している可能性が考えられた.一方,遅れ穂数は5.6株 m–2ないし7.4株 m–2で11.1株 m–2より多かったことから,植え付け条数を減じるような極端な疎植は避けるべきと考えられた.