日本作物学会紀事
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栽培
もち性はだか麦品種「キラリモチ」に対する後期重点型の窒素増施が,子実β-グルカン含有率および子実収量に及ぼす影響
内田 多江子高橋 肇稲葉 俊二吉岡 藤治高橋 飛鳥杉田 知彦荒木 英樹水田 圭祐
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2020 年 89 巻 3 号 p. 195-202

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抄録

はだか麦は子実中のβ-グルカンの含有率がもち性品種のほうがうるち性品種よりも高いことで知られている.また,β-グルカン含有率は窒素を穂肥や開花期追肥といった後期重点型で施用することで高まることも知られている.本研究ではもち性品種がうるち性品種に比べてどのようにして子実のβ-グルカン含有率が高まるのか,後期重点型の窒素増施によって登熟期間中にどのようにして高まるのかを明らかにした.窒素施肥に関しては (1) 元肥と分げつ肥を施用した対照区に対して,(2) 元肥と分げつ肥に加えて穂肥を施用した穂肥追肥区と (3) さらに開花期追肥を行った穂肥+開花期追肥区の2つの後期重点型窒素増施区を設けた.もち性品種の「キラリモチ」はうるち性品種の「トヨノカゼ」よりも子実のβ-グルカン含有率が高かった.また,両後期重点型窒素増施区は対照区よりも穂数,子実収量が増加した.β-グルカン含有率は開花期後42日目では「キラリモチ」が「トヨノカゼ」よりも高く,また,「キラリモチ」では後期重点型窒素増施区が対照区よりも高かった.一方で,開花期後28日目では品種間・施肥処理区間に違いはみられなかった.「キラリモチ」では開花期後42日目において対照区は成熟期となったが,後期重点型窒素増施区では成熟に至らない分げつが多かった.

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