日本作物学会紀事
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研究・技術ノート
散播浅耕栽培における低苗立ち密度下でのダイズの生育,収量,品質
松波 寿典関矢 博幸齋藤 秀文阿部 敏之
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2020 年 89 巻 4 号 p. 353-359

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抄録

分散圃場を伴う大規模経営体が増加するなか,分散圃場の生産効率の向上と高い所得増大効果が期待できる省力的なダイズ栽培技術の確立が期待されている.本研究では大豆作において高能率で簡易的な栽培技術である散播浅耕栽培における低苗立ち密度下でのダイズの生育,収量,品質を明らかにすることを目的とした.苗立ち密度が最も少ない圃場四隅 (以下,低密度区) の苗立ち本数は各四隅の内側に隣接する平均的な苗立ち本数を示した区 (以下,対照区) の約35%であった.低密度区の地上部乾物重は対照区に比べ,開花期までは軽かったが,その後,旺盛な葉面積指数 (LAI) の増加に伴い,子実肥大期以降は対照区と同程度となった.群落地際部の相対光量子密度の推移は低密度区で高く,開花期頃においても10%に到達しなかった.低密度区は対照区に比べ,m2あたり総節数は少なかったが,個体あたりの分枝数や分枝節数,一節あたり稔実莢数が多かった.このため,稔実莢数および収量に有意差は認められなかった.また,一節あたり稔実莢数は開花期から子実肥大期頃にかけてのLAIとSPAD値の増減程度と正の相関関係が認められた.これらのことから,散播浅耕栽培において苗立ち密度が最も少ない圃場四隅のダイズでは個体あたりの分枝の発育が促進され,開花期から子実肥大期にかけての旺盛な葉面生長と葉色の向上により一節あたり莢数を増加させることでm2あたり莢数を確保し,苗立ち本数が確保された箇所のダイズと同程度の収量性を発揮することが明らかとなった.

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