近年,低コスト・省力化の観点から水稲直播栽培の面積が増加傾向にある一方で,漏生イネの発生が直播栽培の普及阻害要因になっている.そこで,本研究では水稲乾田直播栽培における漏生イネの防除体系を確立するため,作物の播種の2週間前に耕起を行い,雑草の出芽を促す偽播種床(False Seedbed;以下FS)を作成し,後に非選択性除草剤で枯殺する手法や晩播等の耕種的防除手段と化学的防除手段との組み合わせが漏生イネの出芽の推移および残存個体数に及ぼす影響を調査した.漏生イネとして供試した「たちすずか」および「ヒノヒカリ」はいずれも6月上旬に累積出芽率がおおよそ100%に達したが,「たちすずか」はやや出芽時期が遅い傾向を示した.2017年の漏生イネ残存個体数は,FS処理と晩播を組み合わせることで有意に減少した(対慣行区比4~9%).一方,漏生イネの残存個体数に乾田直播の播種法による差異は認められなかった.また,イネの実生への生育抑制効果があるとされるビスピリバックナトリウム塩液剤高濃度処理の漏生イネ枯殺率は低かった.2018年にはFS処理後の鎮圧処理およびFS処理自体の漏生イネ防除効果を検討したが,漏生イネの残存個体数に有意な処理間差は認められず,FS処理を行わずに晩播にするだけでも慣行と比較して漏生イネの残存個体数は大幅に減少した(対慣行区比38%).以上より,播種時期(晩播)がFS処理や選択性除草剤処理と比較して漏生イネの残存個体数低減に最も寄与することが明らかになった.