日本作物学会紀事
Online ISSN : 1349-0990
Print ISSN : 0011-1848
ISSN-L : 0011-1848
研究・技術ノート
農家水稲圃場におけるUAVによるマルチスペクトル空撮画像を用いた追肥に伴う葉面積変化の検出
橋本 直之齋藤 裕樹山本 修平牧 雅康本間 香貴
著者情報
ジャーナル フリー

2021 年 90 巻 2 号 p. 211-221

詳細
抄録

農家圃場における追肥効果の確認を目的に,水稲栽培を対象にUnmanned Aerial Vehicle(UAV)空撮によって取得したマルチスペクトル画像(MS空撮画像)による葉面積変化の検出を試みた.変化検出の指標として葉面積指数(LAI)増加速度(継時観測したLAIを線形近似した際の傾き:LGR)を用いた.MS空撮画像からLAIを求める手法として過去に筆者らが提案した手法(継時的なUAV空撮時に生じうる日射条件の変動を考慮した手法)を採用し,比較のためにLAI-2200による地上計測も行った.仙台市の農事組合法人が管理する移植4圃場(ひとめぼれ2,まなむすめ1,だて正夢1),直播4圃場(ひとめぼれ4)に計72試験区を設置し,3 m四方に追肥処理(硫安,00区:0 g m–2,10区:10 g m–2,15区:15 g m–2)を行った.その結果,追肥区において穂数などが増加したが収量構成要素に有意差はほぼ見られなかった.一方,LAI-2200で計測したLAIから求めたLGRとMS空撮画像の追肥範囲中心部の画素を解析してえたLGRはいずれもひとめぼれ(移植)において施肥により有意に高くなった.また,MS空撮画像の追肥範囲中心部と範囲外(追肥範囲から2 m)の画素を解析してえたLGRの差では,移植・直播ともに追肥処理区の間には有意差があった.以上から,追肥による葉面積変化を検出する方法としてMS空撮画像の有効性が示唆された.今後は,農家圃場における圃場単位での最適施肥量の設定や,LAI成長の最適化などへの利用が期待できる.

著者関連情報
© 2021 日本作物学会
前の記事 次の記事
feedback
Top