日本作物学会紀事
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作物生理・細胞工学
短日日長下における日本水稲の不稔発生の品種間差と周年変化
岡本 正弘原 貴洋
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2021 年 90 巻 3 号 p. 317-323

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抄録

石垣島のイネの二期作や晩期作では関東以西で育成された感光性の強い多くの品種で不稔を生じる現象が観察され,短日による出穂促進が不稔発生に関わる可能性が指摘されている.自然日長が日本水稲品種の不稔発生に及ぼす影響を調べるため,石垣島の自然光型人工気象室 (最高気温30℃,最低気温22℃,平均気温26℃) において日本水稲9品種を自然日長下で栽培したところ,6月播きではすべての品種で不稔歩合が10%以下だったのに対し,9月播きでは関東以西の多くの品種で不稔歩合が増加した.9月播きで出穂が早まると葯は短縮化し,葯長が1.7 mmを下回ると不稔歩合が上昇した.「シンレイ」,「ニシホマレ」など感光性が強く基本栄養成長性が小さい九州品種は一般に葯が短く,9月播きでは葯がさらに短くなって不稔歩合が増加した.長い葯を有し,感光性が弱くて基本栄養成長性が大きい東北品種「ひとめぼれ」,北陸品種「フクヒカリ」は9月播きでも出穂促進が小さくて葯が短縮しにくく,不稔歩合は低い値を示した.九州品種の中でも「ミナミニシキ」,「ユメヒカリ」は葯が長く,9月播きによる不稔歩合の増加が小さかった.「フクヒカリ」,「シンレイ」を周年栽培したところ,「フクヒカリ」の到穂日数は年間を通して比較的安定し,不稔歩合は低く推移したのに対し,「シンレイ」の到穂日数は日長に伴う変動が大きく,不稔歩合は到穂日数の推移と相反するように周年変化した.以上から,石垣島における日本水稲品種の不稔発生には日長に対する品種の出穂反応および葯長の変動が関わる可能性が示された.

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