日本作物学会紀事
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栽培
早晩性が異なるエゴマ系統の生育および収量関連形質に及ぼす栽培地の影響
平野 達也田中 哲司鬼頭 雅也川口 稜司山田 直輝杉浦 宏之渡邊 靖洋道山 弘康
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2022 年 91 巻 1 号 p. 16-27

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抄録

愛知県北設楽郡設楽町のエゴマ栽培では,台風や早霜を回避するために,早生で収量性の高い品種の育成が求められている.本研究では,設楽町で栽培される晩生の名倉在来と極早生の黒種系統,ならびにそれらの交雑後代から育成された1番,7番および9番系統を中山間地の稲武町と平地の春日井市で2015年と2016年に栽培し,生育と収量関連形質に関する各系統の特徴を解析し,栽培地の違いがそれらに及ぼす影響を調査した.いずれの育成系統も開花始期が名倉在来の9月下旬より早く,1番系統,7番系統,9番系統の順に早生であった.また,いずれの系統も栽培地による開花始期の違いがほとんどなかった.1番系統は他の系統よりも花房あたり着果数が多く,子実千粒重も重い傾向があり,いくつかの収量関連形質が優れていた.すべての系統において,春日井の個体あたり子実収量は稲武よりも少なく,それは春日井での栽培により子実千粒重が稲武よりも軽くなったことが主な要因であった.また,春日井において8月上旬から9月上旬に高温が続いた2016年では,その時期に登熟を迎える1番系統と7番系統の登熟子実割合が著しく低下した.子実含油率は,早生系統が低くなる傾向があり,1番系統と名倉在来を除いて春日井が稲武よりも低かった.以上のことから,標高が比較的低い地域でエゴマ栽培を拡げていくには,登熟期が夏季の高温期と重ならない系統を選定するか,高温登熟耐性を有する系統の育成が必要である.

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© 2022 日本作物学会
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