日本作物学会紀事
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栽培
寒冷地の水稲無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培の現地圃場における根出し種子による苗立率と初期生育の向上
伊藤 景子白土 宏之今須 宏美古畑 昌巳川名 義明
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2022 年 91 巻 1 号 p. 9-15

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抄録

水稲無コーティング種子代かき同時浅層土中播種栽培における,根出し種子の現地生産規模量の種子処理や,根出し種子の苗立率と初期生育の向上効果の実証を目的に,2017年~2019年の3年間,寒冷地である秋田県の2箇所で現地実証試験を行った.根出し種子は,催芽時に根だけを伸ばした種子である.水稲品種「ちほみのり」と「萌えみのり」の種子15~48 kgを30℃の育苗器で根出し処理した.「ちほみのり」は36~41時間,「萌えみのり」は30~45時間の処理で適切な根長の根出し種子が得られた.根出し種子と催芽種子を代かき同時浅層土中播種機を用いて散播するとともに,慣行の直播として鉄コーティング種子を動力散布機で散播した.根出し種子は催芽種子より出芽期の草丈と葉齢が有意に大きく,苗立率や苗立期の草丈,葉齢,茎葉乾物重も大きい傾向にあった.また,根出し種子は鉄コーティング種子より苗立期の草丈,葉齢,茎葉乾物重が有意に大きかった.倒伏程度と収量は催芽種子や鉄コーティング種子と同程度であった.以上より,根出し種子は,育苗器を用いることで現地生産規模量の種子処理が可能であることや,現地圃場においても苗立率や初期生育の向上効果があることが示された.

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