日本作物学会紀事
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栽培
水稲代かき同時浅層土中播種法における根出し種子の苗立ちと初期生育の向上要因
今須 宏美白土 宏之伊藤 景子田渕 研古畑 昌巳川名 義明
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2022 年 91 巻 3 号 p. 205-214

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抄録

水稲無コーティング種子の代かき同時浅層土中播種法における根出し種子の苗立ちおよび初期生育の向上要因を,2017~2019年に圃場試験により検討した.種子処理として,根出し種子,芽出し種子,催芽種子の3水準を設けて機械播種し,播種深度,播種時の器官折損率,出芽率の推移,苗立率および初期生育を比較した.根出し種子は種子予措時に種子根のみを伸長させた種子,芽出し種子は催芽種子よりも鞘葉を長く伸ばした種子である.機械播種により芽出し種子は25~61%の個体で鞘葉が折損したが,根出し種子では種子根が折損した個体は0~1%とわずかであった.根出し種子の苗立率は74~90%で催芽種子や芽出し種子より有意に高かった.本播種法において播種深度分布は種子処理間で差がなく,全ての種子処理で播種深度が深いほど苗立率が低下したが,いずれの深さにおいても根出し種子の苗立率は催芽種子よりも高かった.根出し種子は催芽種子より出芽揃期が3.4~3.8日早く,葉齢および乾物重が大きく推移したが,葉齢増加速度や同葉齢における乾物重は種子処理間で差はなかった.以上より,本播種法における根出し種子の苗立向上要因として,種子根は鞘葉と異なり機械播種時に折損しにくいため芽出し種子よりも苗立ちが安定すること,催芽種子よりも早期に出芽すること,より深い位置からでも苗立ち可能であることが考えられた.また,出芽揃期が早いために初期生育量を早期に確保できることが示された.

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