コムギの栽培管理上重要な発育段階である茎立期を予測することを目的として,低温要求性および日長反応性を考慮した3パラメータのモデル式(改変Weirモデル)と,水稲の発育予測式をコムギに応用した5パラメータのモデル式(堀江・中川モデル)の精度を比較した.検証には茨城県つくば市,三重県津市,広島県福山市および香川県善通寺市において2006年から2019年の間に栽培した農林61号」,「シロガネコムギ」(秋播性程度Ⅱ),「さとのそら」,「イワイノダイチ」(秋播性程度Ⅳ)の発育データを用いた.改変Weirモデルの低温要求性の大きさを表すパラメータは,品種の秋播性程度を反映していた.出芽から茎立期の予測精度(RMSE)は,4品種を平均すると改変Weirモデルと堀江・中川モデルのいずれも4.8日となり,「さとのそら」では改変Weirモデルで精度がやや向上した.パラメータ決定に必要な最小のデータ数は約15と算出され,データ数が増加すると精度は向上するが40以上になるとほとんど変化しなくなった.モデルの精度を高めるためには,データの数だけではなく,作期移動試験や地域連携試験等により,気温と日長の幅が広い条件下で得られたデータを使用してパラメータを決定することも重要であることが示された.