日本作物学会紀事
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水稲の光合成に関する研究
山田 登村田 吉男長田 明夫猪山 純一郎
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1955 年 23 巻 3 号 p. 214-222

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抄録

1. 圃場に栽培した水稲農林 36 号及び陸羽 132 号を用い, その光合成作用に及ぼす光及び温度の影響, 並びに光合成能力の日変化について研究した. 2. 測定装置には, 温度, 光及び通気量を自由に且つ独立に変えて, 同時に12点の測定を行い得るような通気式の装置を新たに組立てて用いた. 測定材料としては, 完全に展開した最上位の1, 2番目の葉を用い, その約10枚を切り取つて同化室に入れ, 60l/hr/100cm2 葉面積の割合で外気を通じ, 1000 w の電球によつて最大 10 万ルクスの照明を与えて, 30分間に吸収同化された CO2 量を滴定法によつて定量した. 3. 25℃ 及び 15℃ の測定では, 水稲の葉の光合成作用は 4~5 万ルクスに於て光飽和に達するが, 35℃ ではこれよりかなり低い処で最高値を示し, それより強い光の下では反つて抑制される. 4. 5 万ルクスの光の下で温度の影響を見ると, 広い範囲 (18.5°~33.5℃)にわたつて, 光合成は殆んど一定の値を示すが, 弱光の下では著しく温度に支配され, 温度と共に上昇する. 5. このように水稲の葉の光合成は温度及び光の両者の組合せによつてその受ける影響が異り, 低温弱光の下で著しく低下するだけでなく, 高温強光の下でもかなりの抑制作用を受ける. 6 水稲の葉の内在的光合成能力はその日の晴曇によつて異つた日変化を示す. 即ち晴天の日には朝夕高く日中やや低下するが, 曇天の日には朝最も高く午後に至るほど低下する. この現象には前歴としての光の強さが関係することが明かにされた. また盛夏の自然温度, 自然照度の下に光合成の日変化を測定すると, いわゆる日中低下現象が見られた. 7. 15°~40℃ の間に於ける水稲の葉の呼吸作用の温度係数 (Q10) は時期によつて 1.66~2.06 の変動を示し, 平均 1.87 であつた. また同一の温度で測定すれば, 光合成の強さはほぼ呼吸作用に比例した時期的変化を示す.

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