日本作物学会紀事
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水稲苗の素質に関する研究
山田 登太田 保夫
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1957 年 25 巻 3 号 p. 165-168

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抄録
苗代の水分, 窒素施用量, 光条件等を異にする24の試験区で苗を育て, その生理的特性を比較した(40日苗). 畑苗は水苗に較べて体内窒素含量が著しく高く, しかもその高窒素含量の下で多量の澱粉を含有していることが大きな特長である. 水稲苗の発根力は体内窒素含量が高く, 他方澱粉含量の高い場合に大となるが, 畑苗はこの体内条件を具備し, 水苗に比し発根力が高い. 苗の呼吸量(乾物量当りは水苗より少ない. 畑苗は窒素含量が高いにも拘らず呼吸量が低いのは蛋白の多くの部分が貯蔵態蛋白であることを示している. 畑苗の冠水抵抗性は水苗より高い. 呼吸基質としての炭水化物の量及び呼吸量から期待されるよりも一段と高い抵抗性を示すが, これは貯蔵蛋白が動員されるからである. 苗の地上部乾物重/草丈の比は体内窒素化合物+全糖+澱粉含量とある程度の相関を示すが, 後者は苗の内容充実度を表わすものであり, 苗の硬さは細胞膜の問題よりもむしろ細胞内容物の充実程度によると考えられる.
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